くまあつブログ

Daily Archives: 2014年3月19日

クリミア情勢への私見

Filed under 熊田あつし

結論から書くと、今回のプーチン大統領による「クリミア編入表明」には
驚きました。

個人的には、現時点では、クリミアの独立は容認しつつ、編入のカードは
温存すると思っていたからです。一度編入を表明した以上、欧米がどんな圧力を
かけ、どんな論理を述べようが、プーチン大統領は後戻りができない状況になった
のではないでしょうか。言いかえれば、そんなことをわかった上での今回の表明は
それほどの決意を持ってのことだろうと感じました。

そもそも、住民投票による独立宣言は、有効なのか、無効なのか。
まず、そこに触れたいと思います。

1999年の東ティモール、2006年のモンテネグロ、2011年の南スーダンは、
いずれも住民投票を経て独立を宣言し、国際連合加盟を果たしています。
世界は、これらの国々の住民投票による独立を承認したのです。
根拠は、国連憲章第1条2項の「自決の原則」だとされています。
今後も、例えば今年の9月には、スコットランドで住民投票が予定をされています。
 
その一方で、欧米諸国は、今回のクリミアは認められないと言っています。
それは、ロシアの武力が介在し、民主的な住民投票ではないという理由です。

しかし、一皮むけば、これは国益をかけた権力闘争が繰り広げられる国際政治の
場での話です。実際のところは、それぞれに根拠を示しながらも、各国が自国の
国益にかなう場合は承認し、そうでない場合は承認しないというのが本音なのでは
ないかと思います。(とはいえ建前でも正当性は非常に重要ですから、どちらも
「国益をかけた権力闘争だ」とは言えないでしょうが。) 

東ティモール、モンテネグロ、南スーダンの場合は、所謂5大国が折り合いを
つけられる話しであったから、国連加盟まで至ったのだと思いますが、今回は違います。

ということを踏まえ、住民投票による独立宣言は有効か無効か、という点に
戻れば、一般論・建前論で言えば、条件を満たしているかどうかというところが
大きな要素となるということなのでしょう。

その上で今回の件に話しを戻せば、ロシアの立場を考えれば、国益にかなうであろう
クリミア独立承認までは予想できました。しかし、もう一歩進んで、ロシアへの
編入も表明するとなると、僕は、プーチンの信念ともいえる決意を感じました。

彼は、ベルリンの壁が崩壊した時に、KGBドレスデン支部に勤務し、ソ連を中心とした
東側世界の崩壊を目の当たりにし、その後、ソ連解体、NATOの東方伸長を
目の当たりにしてきました。今回のウクライナの件はその延長にあると考えたとすれば、
プーチンにとっては「攻め」ではなく「守り」の戦いであり、危機に瀕した祖国を
思う気持ちというものがそこから強烈に出てきているのではないかと推測できます。
このことは今回のプーチンの演説内容からも伝わってきます。

クリミア半島の軍事的な重要性ということに加え、このような背景からくる強烈な
愛国心が、プーチンの行動の根底にあるのではないかと思えてなりません。
ただ、だからといって、今回のロシアの判断を、短絡的に支持するものではありません。
 
一方で、日本は、世界の秩序や自決の原則を踏まえたうえで、日本の国益を最重要視して
行動すべきです。

中国が軍拡を進めている状況下での日米同盟の重要性やエネルギー問題など、
ポイントは何点かあると思いますが、今回は、特に一点問題提起をしたいと思います。

住民投票による独立を安易に認めてしまえば、例えば国後島・択捉島で同じことをすれば、
北方4島の独立やロシアに帰属していることの確認も、論理的には可能になるのではないか?

また、日本の国籍取得制度などとも関係してきますが、ある意図を持った国の出身者が
日本国籍を取得し、特定の島などの人口希薄地帯に集中的に居住して住民投票を行ったら
どうなるのか?
(ちなみに、中国籍から日本への帰化は、年間3000人から5000人程度で推移)。

日本国憲法前文にあるように、私たちは、「諸国民の公正と信義に信頼して、
われらの安全と生存を保持しようと決意」しているわけですが、生き馬の目を抜く
国際社会で、いかに日本の国益や領土を守るかということも、自らの責任として
考えていかなければなりません。

住民投票の有効性は、歴史的経緯、国際秩序、住民の資格等も考慮して判断して
いかなければならないということも、併せて主張すべきではないでしょうか。

今回のクリミアの住民投票の有効性は安易に判断できるものではありませんが、
何があっても祖国を守るためには圧力には屈しないというプーチンの態度からは
(くどいようですが、今回の「行動」ではなく「態度」です)、
国家を担う政治家の気迫を感じる思いがしました。

プーチン大統領の決意を考えれば、オバマ大統領もこれから相当の決意を
求められるでしょうし、両者の間に立たされる安倍総理も厳しい判断を求められる
ことが予想されます。

その時、単なる追従者になるのではなく、主体性を持った発信をしなければ、
また日本は存在感のないままに双方から信頼を得られない結果になってしまうでしょう。
 
今、日本が問われています。

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