くまあつブログ

Monthly Archives: 11月 2013

ロシアより①

Filed under 熊田あつし

中国の防空識別圏設定が問題となっています。
この事には毅然とした対応が必要なことは言うまでもありませんが、
それとは別にこのニュースを聞きながらの自分の所感を書きました。少々長くてすいません。

「中国が尖閣に防空識別圏を設定」。今月初めからモスクワに来ているので、
記事で読んだだけで日本国内の雰囲気はあまりよくわかっていないところもありますが、
様々な反応が伝わってきます。しかし、正直言って日本の対応に場当たり的なものを感じます。
 
今回の事態は、昨今の中国の姿勢を見れば、遠からず想定できたことだと思います。

国際社会とは、国際法がある一方で、実質的に剥き出しの権力闘争が行なわれている闘技場です。
その国際社会で大切なのは、自己の視点に立った主張を繰り返すだけではなく、
他者の視点を理解した上で、様々なプレーヤーとの駆け引きの中でいかに自国の国益を守るか
ということではないでしょうか。彼を知…り己を知った上での行動が必要なのです。

であれば、日本の論理だけで「それはおかしい!」と言っても、相手がひっこむはずはありません。
「国際法上でも日本が正しい!」と言っても、相手は相手の論理で行動します。
それぞれの国が自国の国益のために行動するのが国際社会です。

その中で、日本の国益を守るためには、対処療法的対策ではなく、戦略が必要です。
中国も、何も場当たり的に防空識別圏を設定してきたのではありません。好き嫌いは別として、
国力をつけ、日本の外交的な隙をついて行動してきたことは認識しなければなりません。
もし場当たりであり、外交的な隙を突くという姿勢でないのならば、中国の核心的利益と
言っている台湾も防空識別圏に設定するはずですが、そのような事にはなっていません。
すなわち、中国の戦略的な対応なのです。

逆に言えば、日本も長期的な視点に立った外交的戦略を描き直す必要があると考えます。
国際社会においては、1から10まで自国の要望だけをごり押しし、他者と向き合う姿勢を失えば、
四面楚歌の状況に陥ります。そのことを踏まえた上で日本を取り巻く状況を考えてみてください。
現下の緊張関係として最も意識せざるを得ないのは日中関係なはずです。
とすれば、日韓関係の悪化は、中国にとっては外交上非常に“おいしい”状況を生むのではないでしょうか。
この点は、先日訪米した時に、米国の政治関係者からも強く指摘をうけました。私もその通りだと答えました。

確かに韓国政府の日本に対する姿勢には大きな問題があります。
しかし個々の問題点にその都度感情的に反応するのではなく、大きな戦略眼を持ち、
まずは韓国政府と冷静に向き合い、関係修復を志向していかなければなりません。
私は、国会議員の頃、韓国との関係を改善・強化すべきだと考えていましたが、そのような行動に対し
一部の方から強い抵抗を受けたりしました。しかし、今でも日韓関係の強化は日本の国益に資するものだと考えています。

そして同じく重視しなければならないのが、ロシアだと考えています。
中国との長い国境を有し、強い人口圧力を受けているロシアは、中国との間に緊張関係をはらんでいます。
さらに、私は8~9月に訪米し、その後11~12月の予定でロシアに来ていますが、
米国のシェールガス開発が中国に波及し、その結果ロシアの天然ガス市場に大きな影響を与える
可能性があるということを実感として感じています。この件も露中関係に大きな影を落とす可能性があります。
日韓関係の緊張を中国が利用したように、日本も露中関係に緊張が生まれるのならば、
そのことを踏まえた行動の準備をしなければなりません。

日本が、日米同盟を基軸にしつつ、日韓関係を改善し、あらたに日露関係を構築することができ、
さらには中国との間に同様の課題を持つフィリピンやベトナムともきちんと協議していけば、
中国も今回のような暴挙を繰り返すことは難しくなります。

言うほど簡単でない事は理解しています。しかし、大きな方向性として志向すべきです。
よく、今の自衛隊の実力であれば人民解放軍と戦っても勝てるんだ、という主張を聞きます。
しかし、大切なことは、戦って勝つことではなく、戦わずして勝つことなのです。
自衛隊の重要性は論を待ちませんが、外交と防衛を両輪にし、周辺国が日本との摩擦を避ける、
すなわち「戦わずして勝つ」環境をつくることが善の善なるものなのです。戦前の過ちを繰り返してはなりません。

当然、中国を孤立させたり、中国と対立したりすることが目的ではありません。
ただ、国際社会とは常に緊張関係の中にあり、その中で自国の国益を守るためには何をしなければ
ならないかという戦略眼を持ち行動すべきだ、と言っているのです。

最後に個人的な行動を説明させていただくと、だからこそ、私は今年、米国・ロシアそれぞれに
長期の訪問をしてまいりました。外交といっても最後は人間関係です。日本国内にいて、
掛け声だけで関係改善を訴えるのではなく、相手の懐に飛び込み、本気で正面から向き合って
いかなければならないとの思いからの行動です。こういった思いからの行動をしながら、
未来の日本のため、将来を見据えた国際関係構築の一助となっていきたいと思っております。

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