くまあつブログ

集団的自衛権に関する基礎的な考察

昨今「集団的自衛権」に関する議論がよく見受けられますが、
いろんなところでお話ししていると、感覚的・感情的に論じている場合が
よくあるような気がしています。

そこで、自分としての整理もかねて、いくつかの文献を参照にしながら、
私なりに思う基本的な論点について簡単にまとめてみました。
かなり長くなってしまいましたが、ご容赦ください。

1.「集団安全保障」と「集団的自衛権」の違い

混同しがちですが、これは異なる概念です。
「集団安全保障」は、19世紀的な勢力均衡政策に代わる概念で、
国際連合に受け継がれています。締約国内において、平和に対する脅威が
発生すれば、他の締約国が全体で一体となって、この平和に対する脅威に対応します。
言ってみれば「内部の敵」に対する行動です。国連による集団安全保障は、
実質的には世界全体を対象にし、平和の脅威に対して、他の国々が一緒になって
対応することとなっています。

「集団的自衛権」は、典型的には同盟関係で、その同盟の外部からの脅威に
対して、同盟国が一緒になって対応するものです。すなわち「外部の敵」に対する
行動です。例えば、冷戦期のNATOやワルシャワ条約機構などがわかりやすいと思います。

2.「集団的自衛権」の根拠

日本も加盟している国際連合の、憲章第51条にあります。念のため、
全文記載します。但し、当然ですが、正文は日本語ではありません。

「この憲章のいかなる規定も、国際連合加盟国に対して武力攻撃が発生した
場合には、安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、
個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない。
この自衛の行使に当って加盟国がとった措置は、直ちに安全保障理事会に
報告しなければならない。また、この措置は、安全保障理事会が国際の平和
及び安全の維持又は回復のために必要と認める行動をいつでもとるこの憲章に
基く権能及び責任に対しては、いかなる影響も及ぼすものではない。」
 
補足をすれば、安保理が措置をとるまでの間、安保理に報告することを前提に、
個別的及び集団的自衛の固有の権利を害さないということです。言い換えれば、
「集団安全保障」が機能するまでの間は、「集団的自衛権」を認めると読めるので、
「集団的自衛権」は「集団安全保障」の補完概念ととらえられているように思います。

3.「固有の」の意味

国連憲章51条をもう一度見ていただくと、集団的自衛権は、「固有」の権利
となっています。普通に読めば、これは「基本権」「自然権」として国家が当然に
もつものと読めます。
 
ちなみに、「固有」を大辞林で調べると、「本来備わっていること。」となっています。

広辞苑では、「天然に有すること。」「もとからあること。」となっています。

ただ、先ほども書きましたが、国連憲章の正文は日本語ではありません。
正文は、英語、フランス語、ロシア語、スペイン語、中国語です。

そこで念のために正文も見てみました。(今回は、ロシア語、スペイン語、中国語
までは確認できませんでした、また時間あるときに調べてみます)

まず英文ですが、「the inherent right of individual or collective self-defense」
と書かれており、このinherentを辞書で調べると、「(物に)本来備わっている」
「(人に)生まれつきの」となっています。

また、フランス語では、「droit naturel」と書かれており、まさしく「自然の」権利
となっています。
 
4.現在の政府見解

平成16年6月18日 衆議院 政府答弁書 (内閣総理大臣小泉純一郎)

「集団的自衛権とは、国際法上、自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、
自国が直接攻撃されていないにもかかわらず、実力をもって阻止することが正当と
される権利と解されており、これは、我が国に対する武力攻撃に対処するものではなく、
他国に加えられた武力攻撃を実力をもって阻止することを内容とするものであるので、
国民の生命等が危険に直面している状況下で実力を行使する場合とは異なり、
憲法の中に我が国としての実力を行使することが許されるとする根拠を見いだし難く、
政府としては、その行使は憲法上ゆるされないと解してきたところである。」
 
ここでは、日本国政府としての「集団的自衛権の解釈」と、「憲法の中に、我が国が
実力を行使することが許される根拠がない」ということが書かれていると思います。
 
ということは、一般論としての集団的自衛権は、国家の基本権として否定はされていないと
読んでいいのだと思います。

5.日本国憲法における位置づけ

では、一般論ではなく、日本国は、集団的自衛権を保有するのでしょうか?
あらためて日本国憲法の全文を読んでみました。

先ほどの政府答弁書では、憲法の中に「行使」することが許される根拠がないと
ありました。そこで、集団的自衛権の「保有」について、政府答弁書の表現を借りながら
私としての理解を書けば、「憲法の中に我が国としての(集団的自衛権)保有を
許されないとする根拠を見いだし難く、その保有は憲法上否定することはできない」
という感じになるのではないかと思います。
わかりやすく言えば、「集団的自衛権を保有しているとするのは、憲法違反ではない」
ということではないでしょうか。
 
私は、学者ではありませんので、これらの論点を踏まえたうえで、政治家として
現在日本が置かれている、あるいはこれから置かれようとしている政治的な環境を踏まえ、
日本国及び国民の安全を守るためにどういった対応をすべきかということを
示していかなければならないと思っています。

また、この件に関しては、さまざまなご意見やご指摘もあると思います。
是非いろいろなお声をお聞かせください。よろしくお願いいたします。

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