くまあつブログ

ウクライナ情勢への私見

ウクライナ情勢が激動の真っ只中にあります。
先日来、FaceBookで書いてきた私見を、簡単にまとめました。

今回の発端となったキエフのデモは、僕が昨年モスクワに滞在している頃に
始まりましたが、その頃モスクワで間接的に聞いていた話では、正直なところ
ここまで事態が進展するとは思いませんでした。

しかし、2月18日からのデモ隊と治安部隊の衝突によって多数の死者が出たことから、
事態は収拾不可能なほどに悪化しました。
この衝突が起きた時期ですが、2月7日から23日まで開催されていたソチ五輪に
重なり、ロシアが行動をしばられている時期ですが、これは偶然なのでしょうか?

今回の事態からは話しがそれますが、少しさかのぼって2008年の南オセチア紛争を
振り返ってみると、グルジア軍とロシア軍の戦闘が始まったのは、8月7日でした。
これは、プーチン首相(当時)が北京オリンピックの開会式に出席しているタイミングです。
この時も、一方の当事国であるロシアが動きにくいタイミングで事態は急変しました。

この南オセチア紛争では、先にどちらの軍が仕掛けたかは双方主張が異なっているので、
その件にはふれません。ただ、紛争前からアメリカがグルジアに対し、
鉄道や装備の面で援助をしていたのは事実のようです。
グルジアは、アゼルバイジャンからトルコに至るパイプラインの中継地で、
ロシアやイランを経由せずに中東の原油を手に入れるために重要な地域だと
いうことが背景にあるのでしょう。

そして、今回のウクライナ情勢。
先にも書いた通り、またオリンピックの時期に大きな動きがおきました。
そして、その間、アメリカは、ソチでテロが起きた時の米国人救出の為と言うことですが、
フリゲート艦テーラーと揚陸指揮艦マウント・ホイットニーを黒海に派遣していました。
(もっとも、テーラーはトルコのサムスンで停泊中に座礁してしまっていましたが…)

考えすぎかもしれませんが、ウクライナは黒海に面しており、今回注目されている
クリミア半島こそがロシアの黒海艦隊の基地になっているところです。
いろいろと背景を考えてしまいます。

さらに付け加えれば、2月22日にヤヌコビッチ大統領が解任されたすぐ後の24日には、
アメリカ政府はバーンズ国務副長官がウクライナの首都キエフに25日から26日にかけて訪問し、
トゥルチノフ大統領代行と会談すると発表しています。
とっさの対応とは思えないほど手際がよいように感じてしまいます。

率直に言えば、私は、今回の事態の発端は、世界がオリンピックに注目している裏側で、
ロシアがオリンピックで動けないことも含めてその状況を利用しながら、
アメリカが強くしかけたことにあるように感じています。

旧東欧諸国やバルト三国までEUに加盟している現状で、兄弟国家とも言えるウクライナにまで
EUの東方拡大が及べば、事態が緊迫する事は当然です。
ロシアからすれば、特に、黒海艦隊の基地とロシア系住民の保護、ここは何があっても
譲れない一線でしょう。

ヤヌコビッチ大統領の政治が良かったかどうかの判断はここでは留保しますし、
民衆の力による政権打倒も否定するわけではありません。
しかし、ウクライナのトゥルチノフ大統領代行が、民主主義的な手続き、
すなわち選挙によって選ばれたのでないことは確かです。
東西で親欧派と親ロ派のわかれるウクライナで、今のままの政権が全土を掌握する
正当性をもてるはずはありません。
本来であれば、現体制は暫定的な選挙管理体制として、すみやかに民主主義的な
選挙を行なうべきでしょう。
しかし、国益をかけた駆け引きが行われる国際社会ではそのような単純なことには
ならないでしょう。
むしろアメリカは、この政権と対話を続け、既成事実を積み上げているようにしか
みえません。

これではロシアが態度を硬化させるのは当然です。

ただここで言いたい事は、しかけたアメリカが悪くて、今回はロシアに正当性が
あるということではありません。
先ほども書いたように、国際社会は、各国が国益をかけた権力闘争をしている場です。
善悪も大切ですが、その前にまずは現実を踏まえ、いかに日本の国益を守るかが
問われているのだということが言いたいのです。

アメリカは恐らく、同盟国である日本にも共同歩調を求めて来るでしょうが、
私は、エネルギー供給源の確保や領土問題を抱えるわが国としては、単純に歩調を
合わせるべきではないと考えます。
日本は、日米同盟を堅持しつつも、ロシアとの対話の窓口としての役割を果たす
道を目指すべきです。

その点は、日本以上にエネルギー供給源としてロシアに依存し、また経済的な
結びつきも強いドイツなども同じ課題を抱えるでしょうから、このあたりとの情報交換も
大切になるのではないでしょうか。
(ちなみに、ロシアからの天然ガスに依存する度合いは、EUは25%と、
日本の9.5%を大きく上回っています。)

今後、軍事的緊張に続き、米ロ間の経済戦、情報戦、外交戦が始まります。
日本外交の真価が問われる局面です。

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